松山からフェリーで約10分というアクセスの良さは、やはり大きな魅力です。ただ「この島ならではの特徴」と言えるものは、まだこれから作っていく段階かもしれません。とはいえ、近年はおしゃれなコーヒーショップやお土産屋さんが増え、島での楽しみ方が充実してきました。観光客の多くは、レンタサイクルで風を感じながら島を巡り、青空が広がる海岸沿いを走って飲食店を訪れ、民泊に泊まってゆったりと過ごし、最後にお土産を買って帰る――そんな滞在の流れができつつあります。— 山下さん

これは日本全国でも共通の問題ですが、興居島でも人口減少が進んでおり、空き家が非常に多くなってきています。コロナ禍以降、空き家バンクを運営し、これまでに100軒以上の空き家が売買・活用されていますが、それでもまだ多くの空き家が残っており、人口も減り続けているのが現状です。興居島でお店が増えて、他の島に比べると「最近の興居島はいいね」と言っていただく事も増えましたが、空き家の取り組みはさらに今後進めていく必要があると考えています。— 山下さん

以前は宿泊施設がないことが、観光の大きな課題でした。海水浴場は日帰りの家族連れに人気でしたが、それだけでは島に経済的な恩恵が十分に届きませんでした。今では民泊施設ができたことで、宿泊や長期滞在が可能になり、島の可能性が広がったと感じています。— 楠さん

興居島フェリーは家族から代々受け継がれてきた事業ですが、島民の減少を目の当たりにして、「このままではいつまで維持できるのか」と危機感を持ちました。乗客を確保し続けるためには、観光や宿泊事業にも取り組む必要があると考えました。国の補助金に頼って事業を続けるよりも、島の経済を持続可能な形で活性化させたいという思いから、フェリー事業を観光業にも広げることにしました。— 山下さん

状態の良い空き家売却の相談があり、島外で宿泊施設を運営している友人に「力を貸してほしい」と物件を紹介し、興居島で初めての民泊の運営を始めていただきました。状態の良い空き家で、価格も手頃だったため、比較的スムーズに投資できたと聞いています。そこからさらに3軒がリノベーションされ、今は立派なゲストハウスとして運営されています。その後も空き家の民泊活用の取り組みが広がり、現在では14軒の民泊施設があります。2026年には20軒に達する見込みです。— 山下さん

最近は、民泊を始めたいという相談が増えていて、興居島フェリーにも質問が寄せられています。私もできる範囲でアドバイスしています。民泊は比較的始めやすいので、多くの人に気軽にチャレンジしてもらえたら嬉しいです。— 楠さん

島に泊まる観光客の数が、明らかに増えました。夕方のフェリーでは若者の姿をよく見かけますし、連休中には県外ナンバーの車も増えています。外国人の長期滞在者も増えていて、島内で見かける機会が多くなりました。カップルや卒業旅行の方々がレンタサイクルで島を巡り、飲食店やお土産屋で賑わっている様子を見ると、これまでになかった活気を感じます。Airbnbのアプリで松山市周辺を検索すると、興居島のリスティングが多数表示されるようになり、検索でもヒットしやすくなっています。「YULLAT」や「興居島日和」などの人気物件にはリピーターも多く、宿が快適すぎてずっと宿で過ごす方もいるほどです。以前は、観光客はジュースを買うくらいで、ほとんどお金を使わずに帰っていました。ここ数年で客単価は数倍に増え、宿泊しない観光客でも、島内のさまざまな場所でお金を使ってくれるようになりました。— 山下さん

私はレンタサイクルを担当していますが、特に韓国人観光客に人気があり、韓国語が話せないのが今の課題です（笑）。興居島の民泊はとても充実していて、ゆっくり過ごせる環境が整っています。「YULLAT」には卓球台、「AL MARE」には麻雀部屋やサウナがあり、食事は「島うどん」で楽しむ方も多いです。移動式スーパーやAコープで食材を買って、大人数で自炊するケースも増えています。— 楠さん

宿泊施設や飲食店が増えたことで、喜びの声を聞くことが多いです。以前は、島外に住む家族が帰省しても、興居島に泊まる場所がありませんでしたが、今では「久しぶりに家族で島に泊まれた」という声も聞かれます。もちろん、静かに暮らしたいという島民の方もいらっしゃいますが、これまでのところ騒音などのクレームはなく、民泊がもたらす恩恵を地元の方々も実感されているのではないかと思います。— 山下さん